福島の原発事故は、原子炉自体は何とか安定していますが、周囲にばら撒かれた放射性物質をどうするかという問題に関しては、いまだ収拾の道筋が見えません。 そもそも、除染という行為が非常に原始的なもので、要は放射性物質を集めてどこか危険でない場所に置いておきましょうという取り組みに過ぎません。 これには他にどうにもならないという理由があってのことですが、納得はいかないものです。なぜこのような手段しか取れないのでしょうか。 |
放射能を取り除く方法で中和させる方法があります。 例えばフェノールという物質で中和の説明をしますと、フェノールと言う物質は強くはありませんが少し毒性があります。しかし、この物質は、炭素、水素、酸素というありふれた元素しか含んでおらず、その配列が特定の形になると毒性を示します。 この物質を分解して、個々の元素にしてしまうと、もう毒性を示しません。(フェノールを分解しても直ちに単体にはなりませんが説明の為そうとします) フェノールを例えに出しましたが、本来は毒を無毒化するとはこういう形であるべきです。 しかし、放射性元素については違います。放射性セシウムや放射性ストロンチウムという物質は、元素自体が放射能という毒性を持っているのです。フェノールの例で置き換えると、例えばフェノールを構成する炭素原子が放射能という毒性を持っているため、ばらばらにしてその配列を崩してやっても、炭素原子自体が毒性を持っているため、いつまでも毒性は消えないのです。 なお、放射性元素は放射線を出すこと(放射性崩壊)を繰り返すと、最後には放射性でない元素に変化して収束します。これを促進する研究もなされていますが、まだ実用化段階ではありません。この技術に期待したいところですが、この促進処理により、副作用的に周囲の物質を放射性物質に変えてしまう(放射化)と何をやっているのかわからないので、難しい技術ではあります。 |
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また、どのような元素でも放射性元素に成りえます。 例えば、先ほど、炭素原子が放射性であるという説明を、さも仮定のように述べましたが、放射性炭素という物質も、この世の中には存在します。逆に、セシウムやストロンチウムにも放射性でないものもあります。ですので、放射性セシウムを単にセシウムということは、正確性に欠く表現ですので、あまりオススメできません。 このように考えると、今行われている除染という行為は、原始的に見えますが、やむをえない取り組みで現在とりうる手段としては最良のものではあるのも事実なのですね。 |